ヘッダーイメージ 本文へジャンプ

◆図書目録を作る
「本を選ぶ」(ライブラリ-・アド・サ-ビス発行) 【No.234 2004/11】

 1975年から92年まで、老舗出版社の図書目録を担当した。今のようにネットで即
検索できる時代と違って、読者にとって本探しには欠かせない存在だったと思う。
 作る側にとっても神経を使う作業だった。70年代は、さすがに活字組版は少なくな
っていたが、手組写植の時代で、電算写植が登場したのは80年代に入ってからだっ
たと記憶する。とにかく時間と手間がかかった。
 84年に、全面改訂のため電算写植に切り替えたが、その際使ったエネルギ-は、
今思うと(質の問題も含め)通常の単行本を数冊作る作業量に等しい。千点を超す図
書を、時代に対応した分野に配列し直し、書名ごとに、著者名(編者名)・書名・判型・
ペ-ジ数・定価・ISBNコ-ドの順に記したあと、約100字の解説文を書く、あるいは
書き直す。品切れの書名を巻末にまとめる(それも、絶版と当面の品切れに振り分け
る)。
 あとは索引。
 現在の索引作成技術はすばらしいと思わざるを得ない。図書目録を担当した最初の
年、初めて書名索引と著者名索引を付けた。読者の便を図ったつもりで意気揚々とし
ていたら、先輩からどなりつけられた。著者名の「読み」が何人か間違っていたのだ。
(例)「恒内-つねうち? かいとう○」「実方-じつかた? さねかた○」等々。ことほ
どさように人名の読み方はむずかしい。いくつかの誤植も発見されて、結局断裁・刷り
直しの憂き目にあった。
 電算改訂時は、当時最先端の業者を使ったにもかかわらず、化け字や、何でこうな
るのといった原因不明の事故に悩まされた。目録にとって、索引は鬼門だなとつくづく
思った。ここ数年、いくつかの単行本に索引を付けたが、ほぼ3日でミスもなく校了に
なっているのが不思議なくらいだ。デジタル技術の恩恵というしかない。
 でも、手作りの図書目録を担当したことへの愛着と感謝の思いは少なからずある。ま
ず各々の本の歴史(寿命と言ってもいい)が押えられる、ジャンル分けのコツが身につ
く、図書の一つ一つを実物に当たって解説文を書く(新刊に限られるが)ことにより、短
文を書く要領が身につく、年度版なので、おぼろげながら時々の流行がつかめる…。
 アナログ思考の典型みたいだが、紙に印刷された辞書と電子辞書の需要の変遷を
見るにつけ、最近では年齢にむち打ってデジタルのノウハウに挑戦している。

 書物の内容と科学技術は幸せな共存・発展が可能なのだろうか。「書誌」という学
問の衰退には心が痛む。けれども、デジタルソフトのプログラマ-には尊敬の念を禁じ
えない、というのが今の正直な気持ちだ。
                                      (伊藤雅昭・みやび出版)
                                             TOP
フッターイメージ