ヘッダーイメージ 本文へジャンプ

◆「教育」というテ-マのむずかしさ
「本を選ぶ」(ライブラリ-・アド・サ-ビス発行) 【No.235 2004/12】

 大きな書店に限られるが、「教育書のコ-ナ-」がある。図書館でも、図書館分類に
沿った教育関連の図書が並べられている。
 内容は、どこの書店でもどこの図書館でも似たり寄ったりで、教育心理、教職課程取
得のための参考書や問題集、「教育学原論」などの硬い専門書に加え、時々の話題に
なっている「何となく教育に関係のありそうな」売れ筋の図書が付け加えられていると
いう感じだ。
 21世紀の展望は教育の充実が最優先という各界識者のかけ声で、お上主導の学
校・大学改革や外国語教育が先行しているようだが、書籍の充実という意味ではどう
だろう。テ-マや執筆者を含め、読者にソフトを提供する側に問題がありはしないか。
書棚を見るたびにそう思う。
 来年は戦後60年、戦後民主主義も定年を迎える年となる。
 文部省と日教組の対立の図式に慣れ親しんできた世代には、近年の、日常的に繰り
返し報道される子ども・青年がかかわる事件に正対できないでいる。自身の成長過程
で体験してきたことでは消化できない現象にとまどいを感じている。何か解決のヒントと
なる書籍はないだろうか、と一生懸命に背表紙をたどっていく人も多いのではないか。
 一つの提案だが、<偉人伝>を新時代向けに編集し直すというのはどうだろうか。
 野口英世・樋口一葉の新札の人物設定は、何となく「見え見えの復古調」と私など思
ってしまうのだが、編集の仕方次第では、歴史的偉人(意外性も含め)の再発掘は、案
外新時代の活性化につながる可能性はあるのではないかと思うのだ。
 高度成長期を謳歌してきた団塊の世代が、ものごころついたころ最初に与えられた本
が偉人伝だった。そこには、戦後の新しいイデオロギ-「(出自にかかわらず)努力すれ
ばこのような人にもなれる」という現実味のあるスト-リ-が描かれており当事者として
はワクワクしながら読んだものだ。もちろん過去に抱いた懐かしいという感性を、後世代
に押しつけるという意味ではないし、復古調の文体に慣れ親しんでほしいとも思ってはいない。あえて今、前向きに生きるヒントとして考えてみたらどうだろう。
 ずいぶん長い間、「教育」という誰もが関心をもつ課題に取り組んできたつもりで、いま
だ同じ回路を逡巡している。熱心さを鼓舞すれば「エゴ」になり、一般論を吹聴すれば「日和見」となじられる。でも気をつけて観察してみれば、バランスのよい、新時代に適応した熱心な教育者・教育書は案外多い。
 「硬い教育書」というイメ-ジを何とか払拭したい。図書館・書店の皆さんの積極的目配りをお願いしたいと思っている。

                                     (伊藤雅昭・みやび出版)

フッターイメージ