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◆編集者の仕事(4) 単行本編集 上
「本を選ぶ」(ライブラリ-・アド・サ-ビス発行) 【No.241 2005/06】

 1992年、17年間の宣伝部生活を終え単行本の部署に異動した。
 一般書編集室というこぢんまりとした編集部で、構成員はいずれも団塊の世代。うるさがたが揃っていた。
 前回取り上げたPR誌の連載がいくつか適当な分量になっていたので、まずそれらの単行本化を目ざした。宣伝部時代からの連載の単行本化は、数え上げてみるとずいぶんな数になる。
 刊行順に、『犯罪症候群』(別役実著・以下「著」略)・『旧約聖書物語』(山本七平)・『新・家族論』(羽仁進)・『ドストエフスキ-のペテルブルグ』(後藤明生)・『日本と中国』(吉田光邦)・『当世病気道楽』(別役実)・『40才からの老いの探検学』(上野千鶴子)・『寅さんがタバコを吸わない理由』(大室幹雄)・『夜明けを待つ政治の季節に』(秋葉忠利)・『辞書のはなし』(三省堂編修所)・『花橘をうゑてこそ』(横井清)・『エロスの世界像』(竹田青嗣)・『世代の考現学』(三省堂編集部)・『日本のかたち・アジアのカタチ』(杉浦康平)・『本と私』(三省堂編集部)・『言語学への開かれた扉』(千野栄一)・『キ-ワ-ドで探る21世紀』(三省堂編集部)……まだいくつかあるが省略する。
 書き手には比較的恵まれたように思う(上記書名の約半数が重版となった)。ただ以前記述したように、出版社には扱う出版物の得手不得手がある。辞書・教科書中心の営業体質はいかんともしがたく、また既にバブル崩壊の影響も出始めて取次配本の規制も厳しくなっていた。当時はまだ企画成立の条件もゆるやかで 企画会議でボツになることは少なかったが、結果として編集者の思いがはずれることも多かった。
 ここで、単行本が刊行されるまでのおおまかな編集者の仕事について述べてみる
 企画立案-取材・著者打診-企画書作成(書名・著者・判型・ペ-ジ数・予価・部数・販売対象など)-企画会議(了承)-著者正式依頼(催促)-入稿(読み・修正)-送稿-造本・装幀依頼-校正(初校・再校)-刊行-PR原稿作成・書評依頼・広告チェック
 編集者の仕事の中で最も重要なのは、もちろん企画立案・著者交渉の段階だ。経験上、編集者のアイディア(ひらめきと言ってもいい)が、著者の思いとピタリはまったときはほぼ成功し、話し合いの過程で修正に修正を重ねた企画は失敗が多いことを実感している。それでも以前「ベストセラ-は、編集者が筋書き通りに著者を動かすことで生まれる」と懇意のベストセラ-作家から指摘されたことがあり、つい最近も「売れる本は編集者が(ことばは悪いが)でっちあげるものだ」と、これも3年前ベストセラ-を出された尊敬する言語学者から助言を受けた。人生の機微を極めた達人の言葉だけに、今も印象に残っている。
 当時一般書編集室の団塊の世代は、厳しい中現在も活躍中である。単行本の編集者の仕事については次号でもう少し深めたい。
                                     (伊藤雅昭:みやび出版)

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