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◆編集者の仕事(5) 単行本編集 下
「本を選ぶ」(ライブラリ-・アド・サ-ビス発行) 【No.242 2005/07】

 企画を立案し、著者交渉がスム-ズに進んだところで、企画書の作成にかかる。いくつかポイントがあるが、「説得力のある書名」が第一、次に定価・部数、(内容の概説はほど
ほどにして)最後に、営業部・宣伝部をいかに説得するかということだろう。これらは企画会議の場で論議されることになる。
 通常の出版社は、企画会議を二段階に分けて設定しているようだ。
 一回目は、企画の妥当性-当社が刊行する意義があるか、市場価値があるか、加えて書名・読者対象とおおまかな部数・定価の論議が行われる。ここで了承されればよほどのことがない限りボツになることはない。二回目は、刊行のほぼ一ヶ月前に書名・定価・部数と刊行日を確認する。
 書名は編集者の思いを一番伝えたい材料だから、どうしても凝りたくなる.担当した『夜
明 けを待つ政治の季節に』(秋葉忠利著=現広島市長)や先輩編集者の例を挙げて恐
縮だが、『愛と鮮血』(新書・山崎朋子著)などは編集者の失敗例。思いだけが先行して、何を主張したいのかよく分からない。『永井荷風ひとり暮し』(松本哉著)・『クイズ新明解国語辞典』(武藤康史編著)・『橋本治が大辞林を使う』(橋本治著)などは、気に入っている数少ない例だ。
 企画会議で了承されれば、著者への正式依頼、原稿催促の段階となる。著者にもいろいろ個性があって臨機応変に対応することが必要だ。期限通りにすんなり完全原稿を頂けることはあまりない。売れっ子著者はもちろん、執筆の過程で推敲に推敲を重ねられる方もいて、そういう著者には日々のお付き合いが欠かせない(個人的には、夜のご接待は少ないほうだと思っているが)。
 無事入稿となれば、ペ-ジレイアウト、原稿整理、写真・図版類の指定、印刷所送稿と続く。校正が出る間を利用して装幀を依頼する。本の世界でもビジュアル化が進んでいるから、装幀・造本には気を抜けない。案外編集者のセンスが最も問われる工程なのかもしれない。印象に残っているのは『日本のかたち・アジアのカタチ』(杉浦康平著)、『東京わが町宮神輿名鑑』(原 義郎 撮影・編著)。後者はヒロ工房の造本・装幀で、江戸小紋を配した布製の表紙で造本コンク-ルの東京都知事賞を頂いた。思い出深い豪華本だ。
 校正は、単行本の場合ほとんど初校・再校と二回の校正で責了とする。著者には初校の段階でお見せする。もちろん編集者一人の校正では心許ないから、専門の校正者に依頼することになる。日本語の表記の基準は案外あいまいで、原則と著者の表記が矛盾することがある。そこを調整するのが編集者のもう一つの腕の見せ所というところだろうか。
 刊行後は、PR原稿の作成、書評依頼、広告チェックくらいが編集者の仕事だ。あとは営業・販売・宣伝部の活動にお任せすることになる。
 次回は、復刻本・ギフト本などの経験に触れたいと思っている。
                                     (伊藤雅昭:みやび出版)

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