ヘッダーイメージ 本文へジャンプ

◆編集者の仕事(6) 復刻本・自費出版・ギフト本
「本を選ぶ」(ライブラリ-・アド・サ-ビス発行) 【No.243 2005/08】

 単行本の編集にいそしむ一方、関連した編集業務にいくつかかかわることとなった。
 一つは、周年行事としての復刻本の編集である。
 とにかく明治14年創業の会社であるから、ロングセラ-には事欠かない。120周年を記念する復刻本の選定には苦労した。社員はもとより関連会社(書店・印刷等)の社員も含めアンケ-トを行った。採用された書名には郷愁を抱かれる人も多いのではないか。
 『袖珍コンサイス英和辞典』『同和英辞典』『明解国語辞典』『キングズクラウンリ-ダ-』『金田一中等国語』などの辞書・教科書の古典に加え、『私の生涯』(ヘレン・ケラ-)『百間座談』(内田百間)『心の小道」をめぐって』(金田一京助)『選挙法大意』(美濃部達吉)『スポ-ツを語る』(鳩山一郎)などの単行本の名著もある。
 活字や紙型はもちろん残っていないから、貴重な本の現物を版下にして製版を行った。
 「古さが新しい」という感覚をここでも味わった。現代人の表面的趣向に奥行きを与えるのに「復刻本」は格好の材料かとも思う(差別表現の問題で『百間座談』が日の目を見られなかったのは残念だったが…)。中身が軽くなる一方の読書市場に、活字を大きくしたり、造本・装幀に工夫を凝らしたりして良書を復活させる努力は、これからもきっと新しい需要を呼ぶはずだ。周年企画の単行本はオンデマンド印刷で限定本とした。さすがに当時はコピ-に毛の生えたという程度のできばえだったが、近年のオンデマンド技術をもってすれば市場価値はもっと増すだろう。
 次は、自費出版。
 ここ10年ほどで、この市場は飛躍的に伸びた。初期のころは、大手の新聞社・出版社の社員の高齢化対策のような位置付けがされていたようだが、新鋭出版社の大宣伝・大営業戦略で、今や大新聞の全5段広告を席巻する勢いだ。高齢化とワ-プロ・パソコンの普及で、自分史やライフワ-クへの関心が需要を支えているようだ。私自身の経験では、高齢学者の学会発表をお手伝いするような出版物を担当した。
 この分野にかかわる編集者は、読者への配慮よりも、著者=依頼主との密接なコミュニケ-ションが仕事のポイントだ。もちろん費用や刊行日程等の制約もあるから、希望通りの刊行物にするのはなかなかむずかしい。ねばり強く話し合いを続け、著者との信頼を得ることが肝要。資金目当てに賞などを乱発する商法は、出版の将来につながらない。
 「ギフト本」とは、社の出版物を法人や個人の記念行事(事業)に合わせ、一定部数以上を値引き販売で買い取ってもらうシステムだ。結婚式や卒業記念には辞書などは格好の引き出物だった時期がある。「冠婚葬祭」や「マナ-」などにも楽しくかかわった。しかしバブルの崩壊は、この市場にも大きな打撃を与えたようである。
 この分野の編集者の仕事についての子細は、機会があれば ということにしたい。
                                     (伊藤雅昭:みやび出版)

フッターイメージ