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◆編集者の仕事(9) 編集者のこれから 下
「本を選ぶ」(ライブラリ-・アド・サ-ビス発行) 【No.246 2005/11】

 ライブドアの日本放送株取得騒ぎが一段落したと思ったら、今度は楽天によるTBS株の買い占めが話題になっている。以前この欄で、ネット企業の戦略が案外短期間で出版業の体質を変えてしまうかもしれないとの憶測があると記したが、とりあえずのタ-ゲットはマス媒体としての放送局のようだ。ネット産業はパソコンや多機能携帯電話を通して、巨大なコンテンツを個別に提供することで多様な価値の受け皿となってきた。テレビ・ラジオ局は、日々の情報の中から全国の市場を意識して番組編成をし、公共放送という形で視聴者に提供している。企業文化や歴史の違いは今のところ大きいし、株の大量取得という方法に問題を感じるが、近い将来何らかの融合の動きが出てきそうだ。新しいメディアの登場で、放送・通信にかかわる「編集者」の活躍の場が広がるかもしれない。
 さて出版のこれからだが、そもそもの原点である「教育」「啓蒙」「記録」「保存」「継承」という役割に変化はないだろう。記録・保存・継承という面では、デ-タ処理技術の進歩で、時間・スペ-スの省力化が格段に進んだ。教育・啓蒙という面では、何といっても学校と図書館との関係が基本だ。「子ども・学生が本を読まない」現象は年々際立ってきており、教育改革も「ゆとり」と「学力低下」の間を逡巡し、一向に方向が定まらない。一方、図書館の利用状況はいかがだろう。文化施設としての活用など含め、地域・高齢化社会の受け皿としても今後大いに期待できるのではなかろうか。いずれにせよ、出版も今日の社会・文化状況を写す鏡の一つであるから、独立独歩といくはずもない。
 ところで、出版というジャンルはもともと、良くいえば奥行きのある、悪くいえば得体の知れない曖昧なところがある。零細企業が圧倒的に多く、出版社の性格も本の内容も硬軟とりまぜて多様かつ豊饒、読者もそのキャパシティを楽しんできたように思う。その意味では、最近の改革・規制緩和、安心と安全、白と黒とを決めたがる-殺伐とした風潮への緩衝地帯としての役割が期待できるのではないか。ゆっくり本でも読んで先のことを考えよう、と。
 最後に、個人的意見だが、これからの編集者の仕事についていくつか挙げてみる。
 まず、多様化する読者の趣向に対応した新鮮な企画を発掘する(言うは易しだが)。次に教養書(古典)を見直す。教育現場での教材に古典が本当に少なくなった。ことばブ-ムに便乗するばかりでなく、文学・歴史・哲学等 見直す価値のある教養書は多い。これはもちろん中高年市場にも当てはまる。それから、書き手市場への積極的働きかけ。ワープロ・パソコンの普及で一般の人の表現志向が飛躍的に伸びた。「自費出版」「テキスト」に加え手作りの本をライフワ-クにしている人もいる。最後に、これは全く私的希望だが「読者が、蔵書としていつまでも残しておきたいと思うような”作品”」を作ること。
 戦後60年。戦後が定年を迎えたのを機に、また新たな一歩を踏み出したいと思っている。
                                                 (完)
                                    (伊藤雅昭:みやび出版)

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