ヘッダーイメージ 本文へジャンプ

「愛にめざめた元禄の女性たち」が書評に取り上げられました

◆「物語として読むこと」が、土佐浄瑠璃の作品の魅力を掴み取る最後の鍵になる
著者の遺作となった本書は、土佐浄瑠璃への愛情が結晶した佳編
 土佐浄瑠璃は、元禄期(1688~1703)に江戸で人気を集めた人形浄瑠璃である。土佐少掾正勝の優美な語りが好まれ、上演作品の版本も広く読まれていた。同時代の近松門左衛門作品などに比べて、現在の一般的な認知度は高くないが、演劇史において元禄期江戸の雄であるとの評価が確立している。土佐少掾にスポットが当てられ、数多くの作品が世に知られるようになり、このような評価が定着したのは、ひとえに著者の研究によるところである。著者は土佐浄瑠璃研究に生涯をかけ、大きな業績をあげられた。本書は著者の遺作となったが、土佐浄瑠璃への愛情が結晶した佳編といえるだろう。
 本書のテーマは、土佐浄瑠璃研究の第一人者である著者が、「さて土佐浄瑠璃の魅力は何だったのだろうか」と考えて、あらためて全作品を読み直した結果、登場する女性たちの毅然として生きる姿に深い感動を味わったことから設定された。まず、「創られた女性」として十名の女性登場人物を作り上げ、一作ごとにあらすじを示しながら、女性の魅力を捉えている。複雑なあらすじがわかりやすくまとめられていて、一般読者が作品世界へ入ってこられるようにとの配慮が感じられる。
 次に「先行作品からの女性」として、十七作品を取り上げている。同じ主題を扱った先行作品と比較しながら、土佐浄瑠璃で描かれた女性登場人物がどのような点で新しく、魅力的であるかを解説していく。
 著者が提唱した「物語として読むこと」は、作品の魅力を掴み取る最後の鍵になるのかもしれない。本書は、二十七作の土佐浄瑠璃について著者が残した、貴重な二十七本の鍵である。
             (「図書新聞」2015年5月23日号、後藤博子氏書評より抜粋)

フッターイメージ